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/中国古典輪読会紹介ページ
和敬塾の14ある教養講座のひとつ「中国古典輪読会」。
要は「中国古典を読む集まり」なんだろうけど、実際問題、何してるの?
先生はどんな人? 集まっているのはどんな人たち? どんな雰囲気?
漢文の知識がない、漢文は苦手だからついていけない……
そんなふうに考えている(かもしれない)入塾希望の皆さんに、教養講座「中国古典輪読会」の実際をお教えします。
What?
/中国古典輪読会とは
なるべく簡単にいうと、
「今を生きる若い世代が、二千年以上前に書かれた古典を学ぶ意義は何か」
「物事を判断するときに、自分の軸をどこにおけばいいか」
を考えてさせてくれる講座です。
中国古典輪読会の講義では、たとえば「いまニュースで話題になっている○○は、古典にこんなふうに出てくる」という言い方がよくされます。また、参加者一人ひとりの人生の悩みを聞き、先生が漢籍をまじえてアドバイスする場面もあります。
毎回、「主としてとりあげる漢籍」が決められていますが、漢文の注釈や解説がメインではないので、漢文の知識がなくても大丈夫。ただし、事前にある程度、国内外の最新ニュースをチェックしておくとよいでしょう。
現在、現役の塾生が2人と、塾職員1人が参加中。社会人の塾友さん(和敬塾OB)も、先生を慕って集まってきます。和敬塾の教養講座は基本的に自由参加なので、参加者の数は日によってまちまち。OBの皆さんも、忙しい日々の合間をぬって参加されます。
Who?
/中国古典輪読会の先生とは
漢籍を通して最新ニュースを論じたり、人生のアドバイスをしたり、なんてことができる先生というのは、いったいどんな人なのか気になりますね。
先生の名前は、信夫 息游先生。
昭和28(1953)年、山形県生まれ。剣・禅・陽明学の泰斗であり、和敬塾では教養講座「中国古典輪読会」と、教養講座「直心影流法定」の指導もされています。
ちなみに、「直心影流法定」は日本伝統の剣術の一流派で、幕末の剣豪である男谷信友、島田虎之助などが有名。島田虎之助に入門して剣術と禅を学んだ人物が、あの勝海舟です。
信夫先生は、直心影流法定剣術と禅については、かつて和敬塾で教養講座「坐禅」をご指導くださった大森曹玄先生(1904年~1994年。禅僧・花園大学学長)に師事。
陽明学については、安岡正篤先生(1898年~1983年。陽明学者。玉音放送の原稿に関わったことで有名。和敬塾でご講演いただいたことも)の教えを受けられました。
現在は、谷中にある「直指草堂」、山形県にある「暁習舎」を主宰。剣・禅・陽明学を通した人材育成に尽力されており、和敬塾でも塾生をご指導いただいています。
How?
/中国古典輪読会の流れ
導入◆夕食と講義
そんな信夫先生による中国古典輪読会は、参加者と先生とで一緒に夕食をとるところから始まります。
土曜の夜6時頃、学生ホール2階の第3教室に集まった塾生・塾職員・OBと先生は、まず1階の食堂へ行き、夕食の膳を運んできます。
定刻になると、中国古典輪読会部長の塾生が、「柝」と呼ばれる拍子木を鳴らして開会を宣言。先生は参加者に食事をすすめつつ、講義を始めます。
「(前回講座からの)この一ヶ月間、世の中の動きで印象に残ったことは? 何か感じたことは?」
と、先生に問いかけられ、参加者は時局についての意見や感想を述べていきます。そのとき出た話題について、先生が漢籍を使って読み解いていくのが、最初の講義です。
中盤◆講義の感想と「人生相談」
最初の講義が終わると、先生は参加者一人ひとりに感想を求めます。
ここでは、講義の不明点や疑問点が出たり、話にあがった時局の問題について、突っ込んだ意見が出たりします。同時に、それぞれの参加者に、最近考えていることや気になることについての話をさせます。
よく出る話題は、和敬塾の行事のことや、塾生自身の学業や専攻のこと、進路や就職活動のことなど。社会人OBの中には、公私にわたる悩みを話す方もいれば、OBとして現役塾生にアドバイスする方もいます。
先生は、参加者一人ひとりの関心事や悩みに対して、先生の思いを話したり、漢籍を引用してアドバイスをくださったりします。
この「人生相談」のような時間は、参加者一人ひとり、全員が最後まで話し終え、全員にアドバイスし終わるまで続きます。信夫先生は「教えないで生徒が自分から察するのを待つ」タイプの先生ではありません。あくまでも丁寧に、誠実に、参加者がわかるまできちんとお話しされます。
この「人生相談」は、一人ひとりに丁寧に時間をかけていくだけに、参加者の人数次第では、その日の講座時間を使いきってしまうことも。また、話題によっては、「それは次の会のテキストに出てくるので、予習しておくように」といって、宿題になることもあります。
締め◆素読
最後の5分間の素読は、この会で一番「中国古典輪読会」らしい時間です(ただし、ここまでに時間を使いきった回は、素読はありません)。
先生の素読は、師である安岡正篤先生仕込み。
昔はおじいさんが孫に素読を教えたりしたものですが(物理学者の湯川秀樹先生が5歳からおじいさんに素読の指導を受け、大きな影響を受けたのは有名です)、昨今はそんなおじいさんも少ないでしょうから、伝統的な素読ができる貴重な機会です。
素読は、まず先生が一節ずつ独特のイントネーションをつけて読みあげ、そのあと参加者全員で声を合わせて読んでいくやり方。漢文の解説はなく、ただ音読するだけです。
テキストはふりがなつきで、安岡正篤先生選『參學心訣』からの抜粋。これは、『荀子』などの古典から素読用の箇所を抜粋・編集したもので、たとえば以下の一節。
荀子修身に曰く、
善を以て人に先だつもの、之を教と謂ひ、
善を以て人に和するもの、之を順と謂ふ。
不善を以て人に先だつもの、之を諂と謂ひ、
不善を以て人に和するもの、之を諛と謂ふ。
是を是とし非を非とする、之を知と謂ひ、
是を非とし非を是とする、之を愚と謂ふ。(後略)
(現代語訳)
善で他人を導びくのを教といい、
善で他人に和するのを順といい、
不善で他人を導びくのを陥といい、
不善で他人に和するのを諛という。
正を正とし不正を不正とするのが知で、
正を不正とし不正を正とするのは愚である。
※岩波文庫『荀子・上』(1961年)25ページより引用
ぜひ、素読を通して古典を自分の血肉とし、人生の支えにしたいですね。
Word!
/信夫先生の教え
これまでの中国古典輪読会では、こんなお話がありました。簡単にご紹介します。
【食事をともにする意味】
“食事をともにすると、(日本人の場合は特に)人の心が和む。
このことの意味を考察するに、『饗』という字がある。この字の上部は『響』と同じで、中央の部分は象形文字で『太鼓』を意味する。太鼓の片方を打てば、打たない皮も共鳴する、つまり『響き合う』。そこで、古来、食事をともにとることは、お互いの心が『響き合う』ようになることとみなされた。
また、プラトンの『饗宴』の原語は『シュンポシオン』で、これは『呑み会』を意味する。これが『シンポジウム』の語源になった。”
【『柝』と『まじめ』】
“『柝』とは拍子木のことで、『間締め』の意味がある。
『間』は時間の「間」。『間』に区切りをつけることにより、『今』を知る。『今』とは、過去・現在・未来の区切りがなく、二度と来ない『今この時』のこと。
したがって、柝は時間を区切るように叩く。これにより、会をもっている『時』と『場』を意識する。この『間締め』が転じて『真面目』になった。”
【物事と人の判断基準】
“人間の発達段階と難易度の順に、三つの判断基準がある。
ひとつは、『好き嫌い』という判断基準。
これは、幼児の段階で発芽する、人間の最初の判断基準。だが、年配者でも人や物事に対しこの判断基準を使う人間は多く、普遍的な判断基準といえる。
二つ目は、『善悪』。『何が善で何が悪か』という判断基準。
小学生あたりから身につけさせるのが普通で、大人になっても、いわゆる『社会通念』として世の中で通用する判断基準。以前は『常識』による判断が通用したが、今は難しくなってきた。
三つ目は、『真偽』。これが、人でも物事でも、最も難しい判断基準といえる。
『善悪』を超えた『真なるもの』を求める判断基準。
人が相手の場合、『私的な判断』以上の価値観を相手の中に認めることができるかどうか。『真の人』として信頼している相手に裏切られることも、往々にしてある。
物事が相手の場合は、はじめから『本物』に接し、繰り返し観察する経験を通して、『偽物』と『本物』の違いを識別できる感覚を醸成していく。”
When?
Where?
/開催スケジュール・開催場所
中国古典輪読会は、月に1回、土曜日18:00に学生ホール2F第3教室で開催中。
月1回の例会のほかに、冬季・夏季の年2回、「集中講義」が開催されます。集中講義には普段より多くのOBの皆さんが集まりますので、社会人の先輩と交流できます。
珍しい行事として、鹿島神宮の「大寒禊」参加があります。1月の年始時期に、鹿島神宮の有名な湧き水池「御手洗池」に褌一丁で入って身を清める恒例行事で、信夫先生と鹿島神宮のご縁から、希望者はこの行事に参加できます。
ぜひ、和敬塾に入ったら中国古典輪読会をはじめとする教養講座に参加して、自分を磨いてくださいね!
→ 教養講座